福井県福井市「建築設計事務所が運営する小さな複合施設h+BASE」

地方都市における持続可能な新しい働き方と暮らし方の提案が高評価

株式会社hplus(本社:福井県福井市/代表取締役:伊藤 瑞貴)は、地方都市の課題を解決した「人・まち・自然」がつながる持続可能な新しいコミュニティーとなる複合建築「h+BASE」を2022年10月に福井県福井市に建設。2023年に入り、地方都市における持続可能な新しい働き方と暮らし方の提案が評価され、様々な賞を受賞することになりました。

竣工写真は以下のリンクよりご覧ください。
賃貸住宅 ・ シェア型ショールーム ・ オフィス ・ SOHO
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受賞建築賞の概要と評価のポイント

◆建築賞名:第55回中部建築賞   
◆受賞部門:一般部門
◆受賞名: 入賞
◆評価のポイント:
この建築の一番の特徴は建築と運営者との総合力で地域に豊かな人間関係を生み出したことにある。公園に面した立地条件を生かし木造のメリットを発揮させ構造や仕上げなど細部にわたって密度の高い検討を重ねた建築である。ある意味当たり前のことだがいいものを作るには欠かせないプロセスを丁寧に踏んで作られたことが感じられる。奇をてらわず在来の技術や材料を使いながら厳しいコストにもかかわらず魅力的な空間に仕上がっている。一階は設計事務所と貸しスペースが中庭的なガラス張りの階段室を介して視覚的につなった空間になっている。貸しスペ ースはギャラリーみたいなスペースで家具や焼き物などの作品が並べられ道行く人も立ち寄っている。二階はロフト付きのスキップした空間になっている。個性的な空間にしたことで作家 や在宅ワークのひとなど個性的な人が集まっているという。一階の貸しスペースの一角には住人の作品も展示されているなど様々な交流が生まれておりさながら昔の長屋みたいな状況になっているのが楽しい。中心部から離れた住宅地の中、ワンルームの賃貸には有利と言えない場所にも関わらず設計事務所が運営することと魅力的空間を作ることで高めの賃料にもかかわらずすぐに満室になったという。一般的なワンルーム賃貸住宅では採算制が最優先され建築的な楽しさや人間関係が生まれる運営システムには目が向かない。そこに風穴を開けた新しい試みは建築的質の高さとともに高く評価される。建築家の仕事は依頼者から与えられたものにとどまらず自ら仕掛けていくという方法もある。ここでは地域に根差し地域に発信していく姿に感銘した。こういう方法で仕事を作っていくの もこれからの建築家の重要な職能になるように思える。
(藤吉 洋司)

この建物は、1階部分に設計事務所を含むシェアオフィスとSOHO、二階部分には賃貸住居を計画されており、2階の住人 が1階の店番をしたり、ショールームを借りて展示会やコンサート等のイベントを行うなど、お互いが助け合うようにして生業を営む場が計画されている。1階は、西側に水回りや倉庫などをコンパクトにまとめ、東側には極力壁を設けず、オフィスとショー ルーム中庭のみで隔てるなど、 道路側の駐車場やテラスに開放的に作られている。また、建物の構造フレームは、これまで設計者が住宅で試みてきた標準化した木軸架構をベースとしており、住戸の界壁に圧縮のみ受けるトラスを入れることで、東側の張り出しを可能としている。断面計画としては一階の倉庫を東側にロフトとして設けることで、賃貸住戸にレベル差を生じさせ、水回りとロフト をコンパクトに積層した西側と、天井高の高い東側がスキップ フロアで繋がる魅力的なワンルーム空間となっている敷地は公共交通の便が悪く車がないと生活に支障をきたす場所であるにも関わらず、 相場より高い家賃設定でも入居者は直ぐに決まり、順調に運営がなされているそうである。 小規模でありながら、生業を起点にまちに積極的に開いていく複合施設 がもっと増えてくれば、地方の郊外は魅力的で活き活きとした ものになるだろうと思わせてくれる建物であった。
(横山 天心)

◆建築賞名:2023年度グッドデザイン賞   
◆受賞部門:建築(戸建て住宅〜小規模集合・共同住宅)部門
◆受賞名: グッドデザイン賞
◆評価のポイント:
設計事務所を地域の拠点としていくプロジェクトが最近の大きな潮流となっている。このプロジェクトもそのひとつと捉えることができるが、何より規模感がすごい。設計事務所の他に、賃貸アパート、SOHO、シェアオフィスを複合し、現代の大長屋とも言える複合体をつくっている。江戸時代、大きな長屋は地域の互助を司り水源や屋敷林を管理することさえもあったらしいが、ここは現代として、緑あふれる庭を角地につくって地域に開放している。人が集まって互いに助け合って住むひとつのモデル的なアプローチと言えるだろう。

◆建築賞名:日本エコハウス大賞2023   
◆受賞部門:新築部門
◆受賞名: 優秀賞
◆評価のポイント:
賃貸住宅でもあるシェアオフィスで、2023年現在、木造で最も注目されている「非住宅」を含めた計画になっています。大変意欲的で興味深く、刺激的なプロジェクトだと感じました。設計事務所のこのような新しいビジネスモデルは、若い世代に希望を与え、未来を明るくしてくれるでしょう。空間のつくり方や構成など、計画力の高さがあることがわかりますし、確実に性能向上に取り組んでいる点にも感心しました。機会があれば見学に伺いたい物件です。

◆建築賞名:ウッドデザイン賞2023   
◆受賞部門:建築空間分野
◆受賞名: ウッドデザイン賞
◆評価のポイント:
かつての長屋がそうだったように相互扶助の考え方を現代に活かした複合施設の提案である。集いを喚起する空間には木材を用い、リラックスして会話や活動ができるような設えとなって
いる。

◆建築賞名:日本空間デザイン賞2023   
◆受賞部門:住空間部門
◆受賞名: サステナブル空間賞
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「h+BASE」とは
h+BASEは、設計事務所が運営する住戸やオフィス等が集まった小さな複合施設です。設計事務所に併設するシェア型ショールームを基点とした繫りの多面化多層化による、江戸時代の長屋のような持続可能なコミュニティーのデザインと、地方都市における持続可能な暮らしと働き方を模索した新しいタイポロジー(類型・タイプ)のデザインをおこないました。デザインのポイントは以下の3つです。Point1:用途を多面化した繋がりによる、互いが助け合う江戸時代の長屋のような、持続可能な暮らしと生業のデザインPoint2:まちや住人が繋がる中間領域となるシェア型ショールームを設け、持続可能なコミュニティのデザインPoint3:時間軸を多層化した繋がり(循環型経済)による地球にやさしい、持続可能なモノ(建築)とコトのデザイン
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デザインの背景
1.福井県では、人の交流が少ない資産運用型の集合住宅の増加と地域コミュニティの衰退が進んでいます。また、近代化による街との接点が少ない閉じられた労働環境が現在も増加しています。そして、住むと働く場所をつなぐ移動手段は、雨や雪の多い福井県では車が多く、人との接点が非常に少なくなってきています。そんな地方の問題点を改善するQOLの高い暮らしと働き方をデザインする必要があると考えました。2.地域に貢献できる開かれた設計事務所を目指し、意匠追求型ではなく、設計監理の枠を超えたシームレスな提案ができる会社体制を構築したいと考えました。 3.コロナや戦争による資材価格やエネルギーコストの高騰により、建築を建てない時代になりつつあります。持続可能な200年使える建築を目指し、メンテナンス体制の確立、リユース・リノベーション・リパーパスできるシンプルな建築、自然エネルギーを活用した省エネ建築、リサイクルできる素材でつくる建築としました。
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建築設計事務所が運営する小さな複合施設「h+BASE」の概要

憩う・働く・買う・住まう。それぞれの目的で居合わせた人々が交わり、つながる。ここは、豊かで小さなまちのような複合施設です。

かつて、まちの中で人々はつながり、協力し合いながら生活を営んでいました。しかし現代ではそれぞれが孤立して暮らし、ご近所のつながりが薄れています。ここで働いている人、ひとりで暮らしている人、何気なく訪れた人。それぞれ、ここへ集まる理由の違う人々がつながり、多様な経験と価値観が交われば、より心豊かな生活に変わるはず。私たちh+BASE(エイチプラスベース)は、かつての豊かで小さな「まち」のような持続可能なコミュニティを、もう一度日常の中につくりたいと考えています。

■一般名称:複合施設(シェア型ショールーム+集合住宅+オフィス)
■事業主体:株式会社hplus
■設計:h+ARCHITECTS
■仕様:敷地面積:521.26㎡|建築面積:193.79㎡|延床面積:360.75㎡| 構造:木造|
規模:地上2階|用途:集合住宅(5戸)・SOHO(1戸)・シェアオフィス(4席)・オフィス・シェア型ショールーム
■価格:78,000,000円(税別|建築本体価格を示す|建築費/施工面積 46.8万円/坪)
■URL:https://h-plus.biz/base/
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