「Zero Waste Flowers」展で現代の民藝を考える。

日々の暮らしがより心地よくなる提案をおこなう『「花 × 暮らし」 心地いい暮らしと道具展』にあわせて、「Zero Waste Flowers」展も同時開催いたします。

今回の「Zero Waste Flowers」展では、ゴミや雑草といった「無価値」に見えるものたちに新たな光を当てた、ささやかな豊かさと現代の民藝を考察します。

民藝の本質とは何か?
民藝運動は、柳宗悦をはじめとする思想家たちによって始められた、名もなき職人たちが生み出した日常の下手物に価値を見出す運動です。この運動は、美術館に展示される高尚なアートに対するカウンターカルチャーとして、民衆の手仕事を尊び、その中に宿る美を見出すものでした。重要なのは、民藝はその名の通り「民」によって作られたものであり、名もなきものにフォーカスした活動そのものが民藝運動の本質であるという点です。決してクラフト的な器や丁寧な暮らしを美化するものありません。

現代の民藝運動を考える時も、クラフト的なものづくりや丁寧な暮らしにとどまらず、「民」という存在そのものに対する問いかけがその本質にあります。かつての「民」は名もなき職人でしたが、現代では、社会の中で見過ごされがちな存在が「民」として再定義されています。そして、その「民」によって生み出されるものこそが、現代の民藝的価値を担っていると考えます。

「Zero Waste Flowers」展の背景
「Zero Waste Flowers」展では、ゴミや雑草といった、通常であれば捨てられてしまうようなものにフォーカスしています。この展示は、日常の中に埋もれている「無駄なもの」「価値がないもの」と思われがちな物たちが、実は美しさや豊かさを持っていることを再発見する試みです。ここで見つけ出される美は、ハイカルチャーに対抗するカウンターカルチャーとしての民藝運動そのものです。名もなきもの、無価値と思われていたものが、豊かな暮らしを再構築するきっかけにしたいと考えています。

この展示を通じて、私たちは日々の生活をもう一度見直し、ありふれた物事の中にある豊かさに気づくきっかけを提供したいと考えています。そして、これが新たな建築やデザインの可能性をも示唆します。ホームセンターやアップサイクルされた素材に目を向けることで、持続可能な未来を築くための新たな建築やデザインが生まれるのではないでしょうか。

民藝と建築の交差点
現代における民藝の影響は、建築の分野にも広がっています。特に、弊社の「福井県の気候風土に適した半規格化住宅郡」は、普通の素材や普通の技術を使いながら、豊かな空間を作り上げるというアプローチは、現代の民藝的な建築の一例だと考えます。ホームセンターで手に入る安価な素材を使い、アップサイクルされた資源を活用し、それらを普通の技術で作り上げることは、100年後にもメンテナンス可能な、持続可能かつ心地よい空間を作り出す可能性があります。

「Zero Waste Flowers」展では、このような建築的な発想も織り交ぜながら、従来の価値観に囚われない、新しい民藝的な空間作りを提案しています。見過ごされていた素材や、これまで価値が見出されなかったものが、実は環境に優しく、かつ豊かな空間を作る可能性を秘めているのです。

終わりに
「Zero Waste Flowers」展は、私たちの身の回りにあるものに再び目を向け、無価値と思われていたものが、どれほど美しく豊かであるかを再確認する機会です。そして、それは現代の民藝運動として、新しい建築やデザイン、さらには持続可能な未来に向けた一歩となることを願っています。