自然の営みを感じながら
手仕事や野菜づくりを楽しむ
心豊かな暮らしを実現。
自然のエネルギーを活かした
暮らし重視の住まいづくりに共感。
Q.当事務所にご相談いただいたきっかけを教えてください。
奥さま:家を建てようという話を始めたとき真っ先に思い出したのが、自宅でヨガ教室をされている福井市下江守の方のおうちでした。ヨガ体験に行ったとき、ものすごく素敵な家だなと思って覚えていたんです。早速その教室のSNSを見てみたら、伊藤さんの事務所が設計されたことが分かり、お話しを聞きにうかがいました。
Q.早々にご依頼いただいたのですが、その決め手はどんなことでしたか?
ご主人:日差しや風など自然のエネルギーを活用するパッシブハウスの考え方に共感したからです。私たち、自然や田舎の暮らしが好きなんです。だから、自然の力を活かした住宅がとてもすてきだと思いました。木の取り入れ方も、私たちが求めているイメージに近く、デザインし過ぎていない、住む人の目線や暮らしやすさを大切に考えた設計だと感じました。
Q.当初は、中古物件のリノベーションも検討されていましたね。
奥さま:はい。でも、パッシブハウスの効果を考えると、基礎からきちんと建てた方がよいとわかり、新築することにしました。それから場所探しを始め、見つけたのがこの土地です。
望んでいたイメージどおりの提案に感激。
私たちらしさも取り入れました。
Q.設計を進めて行く中で、印象に残っていることはありますか?
奥さま:最初に回答したアンケートと、提案してくださった設計そのものです。アンケートは、現在どんな暮らしをしていて、どんな家がほしいかなど、内容の細かさにびっくりしました。でも、提案いただいた設計が、まさに自分たちの暮らしがイメージできるものだったので、感動すると同時に再び驚きました。
Q.どのような暮らしをイメージされていましたか。
奥さま:きちきちせず、ゆったり過ごす毎日です。
ご主人:自然に囲まれた静かな暮らしで、子どもは伸び伸び、ですね。僕の実家は山の中にあって、父親がずっと薪ストーブを使っているので、薪を割ったりする作業も生活の中に溶け込んでいました。そういう自分のベースになっている暮らしが新しい家でもできるといいなと思っていました。
Q.土間と薪ストーブを希望されたのは、そういうバックグラウンドがあるからですね。
ご主人:そうですね。薪の材料も、父の知り合いの方から分けてもらう廃材を中心に、山から切り出した木も使ってますし、薪割りはもちろん自分でやっています。
奥さま:薪ストーブと土間は最初から入れたいと思っていました。薪ストーブは予算の面で最後まで迷いましたが、入れてよかったと思っています。
Q.イメージに近いご提案ができた中で、一部変更もありましたね。
奥さま:はい。流し台と収納の位置を変更し、流し台を置く予定だったところに長いテーブルを設けることにしました。リビングに、子どもが宿題をしたりする場所がほしいと思ったので。シンプルで、横に長く伸びるテーブルは、お客さんがたくさんみえたときにくつろいでいただけるなど、何にでも使える場所になっています。細かいところでは、私の希望で、キッチンの壁のタイルをレンガ風に変えていただきました。古いアメリカの家の素朴さみたいなのが好きなんです。家全体の雰囲気に合わないんじゃないかという声もありつつ、私たちらしいおうちにしたくて、あえてこの色を選んだというエピソードつきのタイルです(笑)。でも、おかげで、私が最も気に入っているのがキッチンと長いテーブルです。
四季の移ろいが感じられる、
心豊かな暮らし。
Q. お気に入りの場所やお気に入りの過ごし方を教えてください。
奥さま:田んぼの風景・カエルの声・山の色・・・四季の移ろいが感じられる家で、とても気に入っています。雪が降った日はとても感動的で、本当にこの土地にして良かったと思います。毎朝、日の出前に景色を眺めながらヨガを始め、日の出とともに子供のお弁当作りを始めるのが日課になってます。
ご主人:居心地がいいので週末に出かけることが少なくなりました。コロナになってキャンプにも行ったのですが、人が多くて・・・(笑)。家で充分楽しめると思いました。休日は、この景色を眺めながらコーヒーを飲むのが楽しみです。また、友達が来ると夏はBBQ、冬はピザパーティー!BBQを何回やったかわからないくらいたくさんやりました。
五感でわかる土間と薪ストーブの心地よさ。
フラットな2階は多様な使い方が可能。
Q.施工中に印象に残っていることはありますか?
奥さま:伊藤さんと担当のスタッフさんが現場監督さんとかなり細かいお話をされていたのが印象的でした。専門的な内容で、私たちにはわからないことが多かったんですが、本当に詳細な部分までチェックしてくださっていることが伝わってきて、信頼感が高まりました
ご主人:壁の中など見えない部分の専門的な確認ですね。僕の父は元々大工なんですが、その父が「この家は結構こだわった造りだ」と言っていました。
Q.ご希望だった土間や薪ストーブの使い勝手はいかがですか?
奥さま:私は畑作りや庭仕事をやりたかったので、外と中の行き来がしやすい空間として土間が欲しいと思っていました。フローリングと違って汚れや傷を気にせずに使えるのもいいなと。それから、玄関と続いているので、玄関が広く感じますね。薪ストーブは本当に温かくて、冷え性の私は、以前はくつ下が必須だったんですけど、今は裸足で過ごせています。
ご主人:土間は、夏はひんやり冷たくて気持ちよく、冬は薪ストーブや日差しの熱を蓄えてくれて温かい。大いに満足しています。薪ストーブは、やはり体の芯まで温まる。僕は、土間に座って山とか田んぼとか外の景色を眺めている時間が好きで、薪ストーブの傍らで過ごせる冬は特にいいですね。焼きいもやピザを焼いたりする楽しみもあります。ピザは焼き上がりが早いし、ものすごくおいしいですよ。
Q.仕切りを設けず、あえて作り込まなかった2階はいかかですか。
ご主人:開放感があって、広く使えるのがいいですね。1階からの吹き抜けと相まって、声がよく通ります。
奥さま:そうなんです。誰がどこで何をしているのか、見に行かなくてもわかります。奥の和室も含めフラットな空間だから、お客さんが大勢みえたときも全員の布団を敷くことができました。今年は子どもが小学1年生になり、机を作って子ども部屋らしくしましたし、そのときどきでいろんな使い方ができそうです。それから、洗濯干し場は動線が短く、ものすごく使いやすくて助かっています。
心豊かな暮らしを実現した住まいに
わが家らしい“味”を加えていきたい。
Q.手作りの机は、ピアノの練習もできるようになっていますね。
奥さま:子どもが習い始めたので、練習用のキーボードを置く場所を勉強机と一体化させました。
ご主人:引き出しから出すみたいに、キーボードをのせた板をスライドして出したり戻したりできます。妻が考えて、僕が作ったという感じです。
Q.他にも手作りされたところがありますか。
奥さま:流し台の下に入っているキャスター付きの木製ワゴンは、主人の真似をして私が作りました。購入した家具はリビングのキャビネットと椅子くらいですね。
Q.自分たちで手を動かしながら、さらに住み心地よくされていますね。
ご主人:そうですね。初めに作り込むというより、暮らしながら自分たちでいろいろ考えて足していこうというのが、僕らの求めていた家づくりですね。
奥さま:ベースをしっかり建てていただいたので、手作りの部分は上手でなくても、ちょっと味があるくらいに感じてもらえるとうれしいです(笑)。キッチン横のスペースも、用途を決めずフリーにしておきました。畑や花壇作りをしたかったので、最初は野菜を保管したりドライフラワーを作ったりする場所にと考えていましたが、それもやりつつ、ミシンで子どものかばんを縫ったりもしています。
Q.今後さらにやりたいことや、どのような家にしたいかがありましたらお聞かせください。
奥さま:コロナで仕事が休みになったときに畑作りを始め、野菜が採れるようになりました。もっといろいろな野菜を育てたいので、今勉強しているところです。
ご主人:妻には反対されるんですが、薪を置くスペースをもっと作りたい(笑)。家は、子どもが大きくなってきたら部屋をどう使っていこうかなと漠然と思っています。今は目の前にある自然の移り変わりを感じながらゆったり過ごしたいですね。
このたびは、取材へのご協力ありがとうございました。
[なかとのくちちょうのいえ]では、以下の賞を受賞しております。
[なかとのくちちょうのいえ]
2020 ふくい建築賞 住宅部門 最優秀賞
[福井県の気候風土に適した半規格化住宅群]
2021 グッドデザイン賞2021 受賞
2021 ウッドデザイン賞 受賞