福井県の気候風土慣習に配慮した、古民家のような半規格化住宅の提案。地域にある普通の資源を最大限活用した、ロハスな暮らしを楽しむ、地域や自然とつながる家。住宅の汎用性を考えた、住む人を選ばない、低価格で高性能な、世代を超えて愛される住宅。古民家のように、検証・改善されていく仕組みの持続性を考えた、チーム全体のデザイン。
- 住宅の汎用性を考えた、ロングライフデザインな、古民家のような住宅。
- 福井県の気候風土に配慮した、自然とつながる、サスティナブルな、古民家のような住宅。
- 福井県に普通にある技術や素材を用いた、地域の職人と検証改善を繰返しながらつくる、古民家のような住宅
背景:
地域の気候風土慣習に配慮した半規格化住宅を考えることで、住宅が抱える様々な問題点(日本の住宅寿命30年問題・地球温暖化・可処分所得の減少・無秩序な景観等)を解決できるのではないかと考えた。 欲望や要望から住宅を作るのではなく、古民家のような一定のルールに従い家づくりを行うことで、機能・意匠・性能の汎用性が高まり、ロングライフデザインな住宅になると考える。 また、福井県のゆったりとした敷地特性を活かした、自然とつながるパッシブハウス設計とすることで、地球環境に配慮した省エネ住宅となり、あわせて、ロハスな暮らしができる、田舎暮らしやアウトドアライフを楽しむ住宅とした。 そして、地域の職人と一緒に半規格化住宅を考え、同じおさまりを洗練させていくことで、愛着のもてる、低価格で高デザインな住宅を作ることができる。 これらの取り組みを丁寧に継続していくことで、新たな地域の景観を創出すと考える。
経過とその成果:
この100年間で家づくりの考え方やつくり方が大きく変わったため、古民家のルールをそのまま採用するわけにはいかない。また、古民家のように地場産にこだわれば、趣味嗜好の設計になり、価格が一気に跳ね上がる。流通網の拡大・産業構造の転換・素材と技術の進化等を考慮し、古民家のルールを再解釈し、12のマニフェストにまとめた。1.匿名性のある住宅・匿名力を活かした住宅。2.シンプル&スモール&スレンダー。3.スマート。4.サスティナブルな住宅。5.つながりをつくる。6.汎用性の確保。7.地域性を考えてつくる。8.地域にある普通の技術でつくる。9.地域に流通している普通の素材でつくる。10.職人とつくる。11.高性能な住宅。12.検証改善を繰り返す。新しいルールによりこれまでの古民家とは全く違った建築となったが、地域の資源をとりこんだ、地域の豊かさを享受できる現代の古民家が作れたのではないかと思う。
12のマニフェスト:
様々な社会問題を解決する現代の古民家を考える。新しい古民家のルールを考える 。この100年間で家づくりの考え方やつくり方が大きく変わったため、古民家のルールをそのまま採用するわけにはいかない。また、古民家のように地場産にこだわれば趣味嗜好の 設計になり、価格が一気に跳ね上がる。流通網の拡大・産業構造の転換・ 素材と技術の進化等を考慮し、古民家のルールを再解釈し、12のマニフェストにまとめた。新しいルール によりこれまでの古民家とは全く違った建築となったが、地域の資源をとりこんだ、地域の豊かさを享受できる現代の古民家のルールを使って設計をおこなった。
仕様:
構造:木造在来軸組工法(積雪2.0m地域・4.5畳グリッドを多用)、階数:平屋〜2階建、延床面積:28坪〜40坪、屋根・外壁:ガルバリウム鋼板、開口部:アルミ樹脂複合サッシ、断熱材:現場発泡吹付断熱材、床仕上:木製無垢フローリング、壁天井仕上:クロス張り、家具建具:製作品、高気密高断熱(C値:0.3〜0.8、Ua値:0.45〜0.64)、耐震等級:耐震等級2同等程度、その他:長期優良住宅と同等程度
現在進行中のプロジェクトも含めると15年間で約60棟の実績がある。建設コストは、一般的な核家族世帯で建物本体価格(消費税別)1750万円~2500万円。坪単価は、5年程前までは40~50万円/坪で推移していたが、ここ数年は建設コストが上がり50~65万円/坪となっている。(平家建て・狭小住宅は除く)また、年間光熱費は、オール電化住宅の場合、1棟あたり電気代10~18万円/年となっている。建物竣工後も調査・検証を行い、設計時の光熱費シミュレーションと竣工後の光熱費の違いを確認したり、クライアントの暮らしの感想を聴きながら、現在も少しずつ改善を積み重ねている。地域の大工さんがクラアイアントや自然との対話の中から古民家を少しずつ改善していったように、今回の住宅でも、竣工後の調査・検証・改善を含めた全てのプロセスを仕組み化していくことで、現代の古民家に繋げたいと考えている。
グッドデザイン賞評価コメント:
伝統建築のパターン化した技術や形態をそのまま引き継ぐのではなく、伝統という考え方の中に内在する気候や地域産業との関連性を普遍的で汎用的なデザインルールとして抽出し、それによって地域性と現代の住まいをつなげようとしている。福井という地域には、固有の特色ある木材産業や木造文化が生きているが、この地域型ビルディングタイプへの挑戦が、地域のそのような伝統的な独自性を未来に向けてアップデートしてくれることを期待している。(審査員:藤原 徹平網野 禎昭千葉 学手塚 由比)
ウッドデザイン賞評価コメント:
特別な設えを施すのではなく、地域の技術と素材、地域の職人はつくる汎用性がありながら地域独自のカラーを持つ半規格住宅の提案である。木材利用においても、地域特性を活かすことが重要であり、気候・地理条件に合わせた快適で環境配慮型の木造住宅が増えることを期待する。